教育現場のための健康医療ニュース

乾癬患者のつらさと苦悩
感染症との誤解が多く

 痛みやかゆみなどの自覚症状に加え、患者の外見の変化や異常により周囲からの見方に大きな影響を与えてしまう病気は少なくない。全身の皮膚に大きな赤い斑点(紅斑)ができ、盛り上がってから白く乾燥し、かさぶたのようになった皮膚表面(表皮)が次々にふけのように落ちるのが特徴である乾癬(かんせん)もその一つだ。この病気に対する認知度は低く、社会の偏見が患者を苦しめている。

 乾癬は、皮膚の状態が感染性の疾患のように見える。しかし、自己免疫の異常による皮膚の慢性炎症が起きる疾患で他人に感染することはない。皮膚の斑点や落屑が不快感や「感染するのではないか」という気持ちを周囲に抱かせる。これにより、対人関係が消極的になるにとどまらず、不登校や引きこもりになったり、うつ病を発症したりする患者もいる。専門医や患者会は「患者の治療だけでなく、周囲に正しい知識をもってもらうことが重要だ」として、10月29日の「世界乾癬デー」を機に、疾患の啓発イベントに積極的に取り組んでいる。

症状はほぼ消える

 「言葉の響きとして『乾癬イコール感染』と捉えられてしまい、病名の変更を願う患者もいる。昔は原因不明とされていたが、最近の研究で免疫異常による非感染性の慢性疾患であることが分かった。治療法が大きく進歩した現在では、治療を続ければ皮膚症状はほぼ消える寛解(かんかい)まではいける。それでも偏見を恐れて家族や職場に隠してしまい、治療を受けない患者も少なくない。適切な治療を受けるためにも、社会的に正しく病気について知ってもらうことが重要になる」

 日本乾癬学会評議員の江藤隆史東京逓信病院副院長は、周囲の理解の重要性をこう強調する。以前は皮膚の炎症を抑えるステロイドなどの塗り薬が中心だった治療も、免疫活動を抑制するため免疫抑制剤の飲み薬や紫外線を照射する「光線療法」などで大きく改善。近年はリウマチ治療などにも使われる「生物学的製剤」により、大きな治療効果を期待できるようになった。

 それでも同学会の調査では国内の患者数は約43万人で、世界各国の平均とされる「人口の3~4%」に比べると少なく、診断・治療を受けていない患者の存在を疑わせている。特に手や足の関節部に激しい症状が続く「乾癬性関節炎」は、激しい痛みに加えて関節リウマチと同様に関節の破壊や変形を生じさせてしまう。患者の一人の久慈唯華さんは「立ち上がったり、物を持ったりするにも苦労するほどの痛みだったが、生物学的製剤のおかげで日常生活に支障はなくなった」と治療の効果を語った。

 新潟大学大学院産婦人科学教授の榎本隆之氏は、「米国やオーストラリアが接種プロジェクトを実施し、プロジェクト開始前に接種しなかった人たちのキャッチアップもしている。その結果、感染率が減少し、イングランド(英国)でも、接種の導入後にHPV関連の湿潤がん(進行がん)が減っている」と述べ、「海外でワクチンの効果が示されている」と指摘した。

接種なくても同様の症状

 江藤副院長は「昔のように『一生治らない』ような病気ではなくなった。それでも偏見を恐れて十分な治療を受けられない患者も多い」と話す。また、重症や難治性の患者に使われる生物学的製剤は治療を受けられる医療機関が限られるほか、薬が高額なため、患者会などは医療費の一部が返還される「高額療養費制度」の活用を呼び掛けている。

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12/12 更新
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