教育CSRの引き出し

2018年10月4日更新

 一言で言うと、企業のメリット・学校のメリットが両立するように企業と学校現場をつなぐ仕事。
そんな教育CSRのコンサルタント業務に携わって今年で11年目を迎えます。
その役割を通して、日々気づいたこと、感じていることを書いていきたいと思います。

第5回「成人年齢引下げと消費者教育」問題(2)~消費者としての自覚~

 成年年齢の引き下げに伴い、消費者被害を防ぐための消費者教育の充実が喫緊の課題になっている。

 そもそも、消費者教育とは何を目指した教育なのか。法律の内容から考えていきたい。
 「消費者基本法」は、「消費者保護基本法」を大幅に改正し2004年に新設された、消費者政策・行政の指針を規定する法律だ。法律から「保護」のなくなったように、消費者は保護される受け身の存在から、自らの権利を積極的に行使するために行動できる自立した能動的な存在へと位置づけが明確に転換された。
 そして消費者基本法が求めている、国や地方公共団体等に消費者教育を充実するなどの施策について講ずることを求める方針を実現するために、2012年12月「消費者教育推進法(正式名称「消費者教育の推進に関する法律」)が施行された。

 消費者教育推進法では、第二条において消費者教育を次のように定義している。

 「消費者教育」とは、消費者の自立を支援するために行われる消費生活に関する教育(消費者が主体的に消費者市民社会の形成に参画することの重要性について理解及び関心を深めるための教育を含む。)及びこれに準ずる啓発活動

 消費者が自立するための要素として「消費者市民社会の形成への参画」が重要とされている。
 同じく第二条では、消費者市民社会についても次のように定義している。

 「消費者市民社会」とは、消費者が、個々の消費者の特性及び消費生活の多様性を相互に尊重しつつ、自らの消費生活に関する行動が現在及び将来の世代にわたって内外の社会経済情勢及び地球環境に影響を及ぼし得るものであることを自覚して、公正かつ持続可能な社会の形成に積極的に参画する社会

 消費者は、消費者被害から身を守るだけにとどまらず、社会の一員として公正かつ持続可能な社会形成のために、よりよい意思決定をすることが求められている。そして、消費者の権利だけでなく、消費者の責任も前提になるということだ。
 ただし、ここで言う消費者の責任とは、消費者被害に遭うのは被害を受けた消費者にも問題があるのではないか、その場合は消費者もその責任を引き受けるべきではないかという、いわゆる「自己責任」とは別のものだということは理解しておかなければならない。
 消費者の権利と責任については、消費者団体の国際的組織である国際消費者機構が8つの権利と5つの責任を提唱している。

 学校授業では、小学校家庭科で、物や金銭の使い方と買い物、環境に配慮した生活の工夫。中学校技術・家庭科 家庭分野で、消費者の基本的な権利と責任、販売方法の特徴、環境に配慮した消費生活についての工夫と実践。高等学校家庭科 家庭基礎で消費生活と生涯を見通した経済計画やライフスタイルと環境、家庭総合で、生活における経済の計画、持続可能な社会を目指したライフスタイル、生活資源とその活用などを学んでいく。

 具体的な事例、防止策や対応策を学ぶことを否定はしない。
 しかし他の取組みでもそうだが、児童・生徒にとって「自分ごと」にならなければ、何をやっても右から左で、生活の中で生かすことができる知識を身に付けることが難しいのだろうなと思って、消費者教育に関わる授業(食育、金融経済教育、環境教育などの授業)を見ていたりする。

 どうしたら児童・生徒の「自分ごと」になるのか。
 日々、社会の中で生活をしている時点で「誰もが消費者である」という「自覚」を持たせることができるかどうかではないだろうか。消費者教育の授業に限らず、教科授業含め学校生活の中で、「一人一人が消費者である」ということ、被害に遭ったり、改めてお金や環境のことを考えたりしていなくても、「既に消費者としての権利や責任が生じている」ということを、教職員と児童・生徒が一緒に意識し、自覚していくことが必要なのではないか。

 教職員も児童・生徒も「消費者」という同じ立場なのだから、一緒に気付き考えながら、最終的にそれぞれが消費者としての自覚を持てるようになる。
 消費者としての自覚が土台にあれば、自分がすべきこと、気をつけないといけないことについて考えたり、行動したりできるようになるのではないか。

 〇〇教育と聞くと、「何かを学ばなければならない」という強制されるイメージを児童・生徒は持つだろう。強制ではなく、生活の中での出来事を意識的に掘り下げていくこと、意識すると見えてくること、気づくことがあるということ、気づいたことに対してどのような行動をしていけば良いか考えていくこと、そして生活の中で行動に移していくこと、このサイクルが消費者として成長することで、そのためのみんなの時間だということになれば、もう少しリラックスして授業に臨むことができるのではないかと。

 特に、外部講師の出前授業はイベント的な取組みになりやすい。日々の生活や学校生活、教科授業とどれだけつながっているのか、特別ではないということを前提にプログラムを考える必要があるだろう。

執筆者紹介
富野サトミ 教育CSRコンサルタント
株式会社ヒトメディア CSR事業部 執行役員。
食育、金融経済教育、情報リテラシー教育、疾病理解教育など、学校現場で必要とされている
「生きる力」の育成に寄与することができる教育CSRのコンサルティングを行う。
北海道教育大学函館校養護学校教員養成課程を卒業後、教育教材出版社に入社。
幼児教室カリキュラム開発、年中~中学3年生の個別指導とあわせて社員育成の経験を生かし、
学校教育を外側から支えるべく日々奮闘中。

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12/12 更新
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