教育CSRの引き出し

2018年10月4日更新

 一言で言うと、企業のメリット・学校のメリットが両立するように企業と学校現場をつなぐ仕事。
そんな教育CSRのコンサルタント業務に携わって今年で11年目を迎えます。
その役割を通して、日々気づいたこと、感じていることを書いていきたいと思います。

第4回「成人年齢引下げと消費者教育」問題(1)~奨学金という消費者問題~

 成人年齢を20歳から18歳に引き下げるという民法改正案が閣議決定され、早ければ2022年度から施行される。
 成人年齢引下げのニュースを見ていると、18、19歳のお金に関するトラブルが増える可能性がある、という問題とセットになっていることが多かった。親の同意なく契約ができるようになる反面、未成年者取消権(※)を失うため、消費者被害が拡大する可能性があるという。そしてその対策として、高校での消費者教育の充実が求められている。

 「高校」で「消費者教育」と言うと、今一番の課題は「奨学金」のことではないだろうか。
 独立行政法人日本学生支援機構は2018年3月、学生(大学・短大、大学院、高等専門学校、専修学校専門課程)の「2.7人に1人」が、日本学生支援機構の奨学金を利用していると発表(※1)している。

 奨学金の問題。
 制度の問題は別として、本人、親(保護者)、教員、それぞれが知識不足のまま、安易に利用している状況があるのではないかと思っている。
 奨学金は借金であるということ、(一般的には)18歳で奨学金の借主になるということ、将来の収入を先取りして自分に投資しているということ、最低この3つについて理解し、考えた上で利用するのであれば、ここまで問題が深刻化することもなかったのではないだろうか。

 奨学金は借金であるということ。

奨学金延滞者で、奨学金を申し込む前から返還義務があることを知っていた人は50.5%(※2)と約半数にとどまっている。なぜこのようなことになってしまうのか。延滞者の場合、奨学金申請時の書類作成者が生徒本人ではなく親が約4割(※3)を占めているということ。生徒本人が、奨学金は返還の義務がある借金だということを知らないまま、利用している状況があるということだ。

 奨学金の借主は生徒本人であるということ。

 教育ローンであれば、親が借主で返済も親が行うが、奨学金の借主は生徒本人だ。18歳で数百万円の借金をし、卒業後(貸与終了後)の翌月から数えて7か月目から返還が始まる。ローン同様、返還が3か月以上滞ると、個人信用情報機関に情報が登録され、それ以降クレジットやローンの契約ができなくなる場合もあり、生活設計に大きな影響を及ぼすことになる。

 将来の収入を先取りして自分に投資しているということ。

 自動車ローンや住宅ローンであれば、頭金や今後の収入など、ある程度の目処と計画を踏まえて利用することがほとんどだ。しかし奨学金は違う。「将来の自分」への投資だ。頭金も今後の収入の目処もついていない状態でお金を借りることになる。
 なぜ大学に進学するのか、大学で何を学び、学んだことをどのように生かしていくのか、その結果、自立した生活ができる収入を得て、奨学金の返還をしていくことができるのか。これらのことを、生徒本人と一緒に親や教員も考えることが必要なのではないか。考え、話し合い、他の方法も検討した上で、それでも奨学金を利用して進学をすると本人が決めるのであれば、それでいい。

 消費者基本法では、消費者の権利として位置付けられているもののひとつに「教育の機会の提供」がある。小中学校、高等学校では現行の学習指導要領から消費者教育の充実が図られ、実践が進められているところだ。どの時点で何を教えるのか、扱う教科や内容は決められている。
 しかし一番大事なことは、学校現場それぞれの状況を踏まえ、生徒にとって今、あるいは近い将来必要となる消費者としての知識をしっかり身に付けさせること。身に付けた知識をもとに、自分で考え自分で態度を決めることができるようになることを目指した取り組みなのではないだろうか。

 成人年齢の引き下げ問題以前に、18歳の約3人に一人は今まさに、お金の問題(消費者問題)に直面しているということを忘れてはならない。

※未成年者取消権……未成年者が契約をするには、原則として保護者の同意が必要で、保護者の同意なく結ばれた契約は、取り消すことができる(民法5条2項)

出典:
※1独立行政法人日本学生支援機構「日本学生支援機構について」(平成30年3月)
※2※3独立行政法人日本学生支援機構「平成28年度奨学金の返還者に関する属性調査結果」

執筆者紹介
富野サトミ 教育CSRコンサルタント
株式会社ヒトメディア CSR事業部 執行役員。
食育、金融経済教育、情報リテラシー教育、疾病理解教育など、学校現場で必要とされている
「生きる力」の育成に寄与することができる教育CSRのコンサルティングを行う。
北海道教育大学函館校養護学校教員養成課程を卒業後、教育教材出版社に入社。
幼児教室カリキュラム開発、年中~中学3年生の個別指導とあわせて社員育成の経験を生かし、
学校教育を外側から支えるべく日々奮闘中。

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12/12 更新
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