教育CSRの引き出し

2018年6月29日更新

 一言で言うと、企業のメリット・学校のメリットが両立するように企業と学校現場をつなぐ仕事。
そんな教育CSRのコンサルタント業務に携わって今年で11年目を迎えます。
その役割を通して、日々気づいたこと、感じていることを書いていきたいと思います。

第1回「どこまで現場のニーズに応えればよいのか?」問題

 6月は食育月間。
 改めて、2005年6月に施行された食育基本法を確認してみた。

「食育」とは


・生きる上の基本であって、知育、徳育及び体育の基礎ともなるべきもの
・様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てること
・子どもたちに対する食育は、心身の成長及び人格の形成に大きな影響を及ぼし、生涯にわたった健全な心と身体を培い豊かな人間性をはぐくんでいく基礎となるもの
(食育基本法前文より抜粋)

学校における食育の6つの視点


①食事の重要性(食事の重要性、食事の喜び、楽しさを理解する。)
②心身の健康(心身の成長や健康の保持増進の上で望ましい栄養や食事のとり方を理解し、自ら管理していく能力を身に付ける。)
③食品を選択する能力(正しい知識・情報に基づいて、食物の品質及び安全性等について自ら判断できる能力を身に付ける。)
④感謝の心(食物を大事にし、食物の生産等にかかわる人々への感謝する心をもつ。)
⑤社会性(食事のマナーや食事を通じた人間関係形成能力を身に付ける。)
⑥食文化(各地域の産物、食文化や食になかわる歴史等を理解し、尊重する心をもつ。)
(「食に関する指導の手引-第1次改訂版-」(文部科学省 平成22年3月)P12~P13 より)

 これらを踏まえ、食品関連企業などは食育に関する様々なプログラムを開発し、学校現場における食育推進の一翼を担っている。

 私が教育CSRコンサルタントとして初めて携わった仕事は「食育」。食育教材を学校現場で実践につなげてもらうための活動を担当していた。
 教材は、食品群や栄養素、エネルギー代謝や朝ごはんの必要性、衛生管理、食生活(マナーやコミュニケーション)など多種多様にわたり、子どもたちにとって身近で大切な食にまつわる生活習慣や食生活について学べるものになっていた。子どもたちの発達段階や生活課題、教科との連動を踏まえ、教材を活用した様々な食育授業が実践されていた。そして先生方から必ずといっていいほど「保護者も一緒に学んでもらうことができれば」という声があがっていた。
 学校での食育は、家庭との連携が課題に挙げられる。
 少し古いデータになるが、2013年に10歳以下の子どもを持つ母親に行った食育に関するアンケート結果によると、9割は食育が必要だと思っているが、6割は実践できていない、その理由として「正しい知識がない(73.8%)」がトップで、「お金がない、時間がない(ともに28.9%)」を大きく上回っている。(近鉄百貨店「べジスタアイランド」調べ「食育に関する意識調査」(2013年))

 子どもたちと同じように保護者にも「食育」が必要という先生方の声にも納得できる。家庭をいかに巻き込むか、家庭との連携が可能な食育プログラムへの改修など、新たなテーマに新たなコンテンツ開発のニーズが高まってきた。  
 学校で実施した内容を家庭で共有できるもの(ワークシートや小冊子)や、家族で楽しめるデジタルコンテンツ(ゲームやデジタル紙芝居)など、モノを作ることはできる。しかし、家庭にそれらのモノが届いたとして、基本的な知識がない、子どもと一緒に取り組む時間がないという中で、活用してもらえる確率は高くはない。活用してもらえなければ課題解決にならないのだ。どうしたものか。

 結論。家庭との連携は考えずできること、すなわち子どもたちの「学び」に注力することに私は決めた。
 学校は子どもたちの学びの場だ。子どもたちが食に関する正しい知識を身に付け、身に付けた知識を可能な限り学校内の活動で活用できるプログラムであればいいのではないかと。
 改めて、既存のプログラムを見直してみた。授業実践をいくつも参観した。そして分かったことがある。「自分にとって大事なこと、必要なことだと分かれば、子どもたちは身に付けた知識を様々な場面で使おうとする」ということに。衛生管理の授業で手洗いの重要性と正しい手洗い方法が分かれば、先生に言われなくても給食前には必ず手洗いをするようになる、6つの食品群とその働きが分かれば、給食の食材に興味を持つようになり、いろいろな食品を組み合わせることの大切さ、なぜ好き嫌いをしてはいけないのか、実感を持って理解するようになる。自主的に行動するようになるのだ。そして、その行動が家庭でも実践され、さらには保護者を巻き込んだ取組みにつながっていけばいいなと思う。

 教育CSR活動は、企業の専門性や強みを生かして、学校現場の課題解決に寄与する取り組みだ。しかし、全ての課題解決につながるものではない。「それは学校が対応すべき問題ですよね」と、線引きすることも重要だ。
 学校現場のニーズに応えようとするあまり、担当者が疲弊してしまっては意味がない。教育CSRを継続していくためには、何をするか、どこまでするかを改めて明確にしておく必要があるのではないだろうか。

執筆者紹介
富野サトミ 教育CSRコンサルタント
株式会社ヒトメディア CSR事業部 執行役員。
食育、金融経済教育、情報リテラシー教育、疾病理解教育など、学校現場で必要とされている
「生きる力」の育成に寄与することができる教育CSRのコンサルティングを行う。
北海道教育大学函館校養護学校教員養成課程を卒業後、教育教材出版社に入社。
幼児教室カリキュラム開発、年中~中学3年生の個別指導とあわせて社員育成の経験を生かし、
学校教育を外側から支えるべく日々奮闘中。

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12/12 更新
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