教育法規あらかると

2018年6月7日更新

教育法規あらかると 第81回

交流・共同学習の推進

 去る2月2日、文部科学省の「心のバリアフリー学習推進会議」から「学校における交流及び共同学習の推進について~『心のバリアフリー』の実現に向けて~」と題する報告が公表された。
 心のバリアフリーとは、障害者等への無理解、偏見、差別をなくすることを意味する。心のバリアフリー学習推進会議は、学校教育において障害のある子どもと障害のない子どもの交流及び共同学習(以下「交流・共同学習」)の推進を図る方策を検討するため、厚生労働省の協力を得て、文科省に設けられた有識者会議である。
 同会議の報告を受けて、文科省は、2月8日付で全国の教育委員会等に通知「障害のある幼児児童生徒と障害のない幼児児童生徒の交流及び共同学習等の推進について」を発出し、各学校における交流・共同学習の推進を促した。その具体的内容は、通知(文科省のホームページに掲載)をご覧いただくとして、ここでは交流・共同学習に関する法令の規定について見ておこう。

障害者基本法と指導要領で定める

 交流・共同学習は、インクルーシブ教育構築のための取組の一つである。周知のように、インクルーシブ教育は、2006年に国連で採択された障害者権利条約の「障害者を包容するあらゆる段階の教育制度及び生涯学習を確保する」(24条1項)という規定に基づく。分りにくい条文だが、砕いて言えば、すべての学校で、障害のある子どもも、ない子どもも一緒に学習できるようにしようという趣旨の規定である。
 この条約の規定を受けて、障害者基本法16条は、「国及び地方公共団体は(中略)可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ、教育の内容及び方法の改善及び充実を図る等必要な施策を講じなければならない」と定めている。
 さらに、11年に障害者基本法が改正され、新たに「国及び地方公共団体は、障害者である児童及び生徒と障害者でない児童及び生徒との交流及び共同学習を積極的に進めることによつて、その相互理解を促進しなければならない」(16条3項)とする規定が加わった。改正の狙いは①障害のある子どもの自立と社会参加を促す②さまざまな人々と共に助け合い支え合って生きていくことを学ぶ③共生社会の形成に役立つ──ことにある。

 こうした法令の規定を受けて、現行の小学校学習指導要領では、「障害のある幼児児童生徒との交流及び共同学習や高齢者などとの交流の機会を設けること」(総則第4─2─〈12〉)と規定している(中学校、高等学校にも同趣旨の規定がある)。17年改訂の新学習指導要領では、「障害のある幼児児童生徒との交流及び共同学習の機会を設け、共に尊重し合いながら協働して生活していく態度を育むようにすること」と、より深めた規定となっている。
 また、特別支援学校小学部・中学部の学習指導要領でも「学校の教育活動全体を通じて、小学校の児童又は中学校の生徒などと交流及び共同学習を計画的、組織的に行う」と示している。
 交流・共同学習の意義について、学習指導要領解説(総則編)は、「児童が障害のある幼児児童生徒とその教育に対する正しい理解と認識を深めるための絶好の機会であり、同じ社会に生きる人間として、お互いを正しく理解し、共に助け合い、支え合って生きていくことの大切さを学ぶ場でもある」と説明している。

 この他、学習指導要領の道徳科では、「誰に対しても差別をすることや偏見をもつことなく、公正、公平な態度で接し、正義の実現に努めること」(第5学年、第6学年)を、特別活動では、「障害のある人々などとの触れ合い(中略)体験活動を充実する」を示している。総合学習の課題でも「福祉」が例示されている。

国立教育政策研究所名誉所員 菱村幸彦
出典:内外教育 2018年3月2日号

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