教育法規あらかると

2018年6月21日更新

教育法規あらかると 第82回

デジタル教科書導入の改正法案

 政府は、2月23日に「学校教育法等の一部を改正する法律案」(以下、改正法案)を閣議決定し、国会に提出した。改正法案は、デジタル教科書を通常の紙の教科書に代えて使用することができる措置を定めるものである。
 文部科学省は、通常国会での成立を目指しており、小学校で次期学習指導要領が全面実施される2020年度からデジタル教科書の本格的な活用が始まる。

視覚障害等では全面使用も認める

 デジタル教科書の在り方については、16年に「『デジタル教科書』の位置付けに関する検討会議」で検討され、同年12月に「最終まとめ」が公表された。最終まとめは、「デジタル教科書の導入に当たっては、基本的には、紙の教科書を基本にしながら、デジタル教科書を併用することとし、紙の教科書により、基礎的・基本的な教育内容の履修を確実に担保した上で、部分的に、デジタル教科書を使用することが適当である」と提言した。この提言を受けて、改正法案は、学校教育法、著作権法等の改正を行っている。

 まず、学校教育法の改正である。改正のポイントは、次の3点だ。
 第1は、小中高校等におけるデジタル教科書の使用。学校教育法34条は、「小学校においては、文部科学大臣の検定を経た教科用図書又は文部科学省が著作の名義を有する教科用図書を使用しなければならない」と規定し、学校の授業における教科書の使用義務を定めている。この規定は中学校(49条)、高校(62条)等に準用されている。
 同条に規定する「教科用図書」は、紙の教科書を意味している。このため、紙の教科書に代えて、デジタル教科書を使用する場合、教科書の使用義務の履行となる法的措置が必要である。改正法案は、新たに34条2項を設け、検定済み教科書や文科省著作教科書の内容を電磁的に記録した教材がある場合、「児童の教育の充実を図るため必要があると認められる教育課程の一部において、教科用図書に代えて当該教材を使用することができる」と規定している(中高校等にも準用)。ここで留意を要するのは、デジタル教科書の使用を「教育課程の一部」に限定している点である。

 第2は、視覚障害等の事由によるデジタル教科書の使用。視覚障害、発達障害、その他省令で定める事由により、紙の教科書を使用して学習することが困難な児童生徒について、文字の拡大や音声読み上げ等で学習上の困難を低減させる必要がある場合、「教育課程の全部又は一部において」、紙の教科書に代えてデジタル教科書を使用することができると規定している(34条3項)。この場合はデジタル教科書の全面使用を認めている点が注目される。

 第3は、いわゆる「附則9条本」としてのデジタル教材の使用。附則9条は、高等学校の専門教科や特別支援学校・特別支援学級の授業において検定教科書や文科省著作教科書がない場合、それ以外の図書を教科書として使用することを認めている。改正法案は、附則9条本についてもデジタル教材の使用を可能としている(同条2項)。

 次に、著作権法の改正である。現行の著作権法33条は「公表された著作物は、学校教育の目的上必要と認められる限度において、教科用図書に掲載することができる」と規定している。学校教育法でデジタル教科書の使用を認めることに伴い、著作権法は、デジタル教科書を「教科用図書代替教材」と規定し、「教科用図書に掲載された著作物は、学校教育の目的上必要と認められる限度において、教科用図書代替教材に掲載し……利用することができる」(33条の2)と定める。

 上記の法的措置で、デジタル教科書の開発が加速されることは間違いない。しかし、紙の教科書の重要性は、今後とも変わらない。

国立教育政策研究所名誉所員 菱村幸彦
出典:内外教育 2018年3月16日号

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